連携で明るいまちづくり
2011.02.17
(平成22年10月1日発行 更生保護さっぽろ寄稿文より)
━ 連携で明るいまちづくり ━
数字で見る限り、札幌市の犯罪は平成13年をピークに減少傾向にあるという。
しかし、私自身を含め市民にとって、札幌という都市が「安全安心なまち」になってきているという実感は少ないのでないだろうか。窃盗や車上狙い、ひったくりなどはもはや日常茶飯事だが、近年の特徴として気になるのは、振り込め詐欺など高齢者の善意につけこんだ卑劣な犯罪、インターネット等を利用した巧妙な犯罪、そして無差別・衝動的にいともたやすく人命を奪うような残酷な犯罪など、内容的にはどぎつさを増している点だ。現代的に進化した一筋縄ではいかない、こうした犯罪に立ち向かうには、情報を地域で共有し、住民が知恵を絞り合うチームプレイが大切になるのはいうまでもない。
行政的な言い回しでは「防犯意識を高める広報啓発」が必要であり、「防犯力を高める情報発信」さらには「子ども等の防犯力の育成」が必要ということになるだろう。
子どもや高齢者にとって住みよいまちかどうかは、その地域コミュ二ティが活発に機能しているかどうかにかかっているが、特に犯罪を未然に防止できるかどうかは、地域力・ご近所力によるところが大きい。行政への橋渡しをし、パイプ役となって地域力をさらにパワーアップさせることができたらということを、議員として日ごろから心がけているつもりである。 しかし、犯罪防止というものをもっと本質的に考えるには、さらに広い視野が必要である。犯罪から身を守るという視点から対処するだけでは、犯罪の温床という、その社会の性質は変わらない。「罪を犯す側」を変えていくということを含めて、社会全体を明るい方に変えていくことが必要だ。
犯罪の予防につとめ、過って罪を犯した人々を導いて更生させ、犯罪の防止に努める保護司の活動は、こうした点でまさに重要である。罪を犯すのは悪魔でも野獣でもなく、一人の人間である。法の裁きによる刑を終えたものを健全で善良な市民として更生させ、受け入れていくことも成熟した社会の使命である。
私自身は市会議員であると同時に札幌市東区保護司会に所属する保護司という立場だが、犯罪者の更生や再犯の防止の鍵となるのは、その社会が彼を一人の生活者として受け入れ得るかどうかだと思う。社会の異分子として排除されがちな彼らが仕事を持ち、収入を得ることによって自立するための積極的な支援を心がけていかなくてはならない、保護司・雇用主会・更生保護事業に理解の深い市会議員で札幌市議会の中に「更生保護事業を支援する協議会」を超党派で14名の議員により立ち上げた。不肖ながら私が会長となり、行政・企業・保護司会・更生保護女性会・BBS会・その他の団体と連携を深めるとともに、市議会・行政機関・企業の中に更生保護事業を支援する輪を拡げていきたい。
近年、札幌市民の切実な要望は、除雪に替わり「犯罪のない安全・安心なまちづくり」となっているが、それはまさに保護司の掲げてきた、「社会を明るくする運動」の行きつくところである。
札幌市議会更生保護事業を支援する協議会に対し、それぞれの立場における経験と炯眼を生かした御指導をいただければ幸いである。
札幌市議会更生保護事業を支援する協議会長 札幌市議会議員 鈴木 健雄