絆が社会を変える
2014.09.30
北国の秋らしい風の冷たさに、身の引き締まる思いです。皆様にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
日頃から議会活動、後援会活動に対し深いご理解とご支援を賜り、心より厚く御礼申し上げます。
平成23年、皆様のご支援で5度市政へお送りいただきましてから、今任期も残すところ7か月足らずとなりました。今期は、総務委員会、経済委員会、財政市民委員会に所属して、札幌市のまちづくり計画など積極的な議論を重ねてきました。現在は文教委員会に所属して、利用者、事業者どちらもがさまざまな不安をもつ子ども・子育て支援新制度について、勉強会を持ちながら真剣に議論するなど議会活動に誠実に取り組んでいるところです。
今期一年目の平成23年99月、視察で三陸の東日本大震災被災地を訪れました。当時は、津波によって陸に上がった大型漁船や横転した燃料タンクはそのまま放置され、電線に引っかかったままの被災者の服がなまなましい姿をさらしていました。津波で海水を浴びた街に立ち込める濃縮されたような磯のにおいを今も忘れることができません。若い女性職員が防災無線で避難を呼び掛け、最後には津波に呑まれ殉職したという南三陸町防災対策庁舎は骨組みだけになり、そのあたりにおびただしい数の紙片が散乱しています。手に取るとそれは候補者の名前が書かれた投票用紙で、町民の安全、安心な生活への思いや政治に対する期待に胸の詰まる思いでした。大災害は南三陸町の人々が長い年月をかけて築いてきたものや多くの住民の願いを一瞬にして奪い去ってしまったのです。私たちは、この国で起きた災害の記憶を薄れさせることなく、目で感じたことを知恵に変え未来に生かしていかなくてはなりません。
人と人との絆の大切さを改めて気づかせてくれた震災でしたが、翌年の平成二十四年一月、札幌市白石区で姉妹が孤立死するという大変痛ましい事件が起きました。姉は職探しと、障害を持つ妹を預ける施設探しをしており、生活保護の相談にも複数回訪れていたにもかかわらず、結局誰もこの姉妹を助けることができなかったという事件です。明らかに困窮状態にある姉妹からのSOSを見過ごした行政側の対応は明らかに問題ですが、姉妹を死に追いやったのは、本音で相談できる知人がいなかったこと、働く意思のある姉に安定した職や働く機会を与えることができなかったことなど、さまざまな社会的要因があったようです。
都市化,核家族化とともに共同体が崩壊し、地域では今高齢者や障害を持つ人の孤独死が後を絶ちません。札幌市においては、道内の疲弊した地域からの流入により、高齢者の人口はますます増え、2030年には37パーセントが単身世帯という本格的な「無縁社会」に突入します。無縁社会は高齢者や障害を持つ人のみならず、子どもを産み育てるお母さんが孤立する社会でもあります。
これからの札幌に必要なのは福祉の充実はもちろんのこと、地域に生じた問題を地域の中で知恵を出し合って解決できる地域力です。「地域の力」として、町内会や、NPO,ボランティアをつうじて長年にわたって献身的な努力をされてきた方々には本当に頭の下がる思いですが、その知恵が新しい世代に引き継がれ、さらに多くの人々を巻き込む輪となれば「地域力」がさらにパワーアップすることはまちがいありません。あの未曾有の災害が気づかせてくれた「絆」を家族や地域がいかに取り戻し、行政とも一体となって新たな「絆」をいかに創造していくかが今後の社会を生き抜く知恵です。
深刻な少子・高齢者社会である札幌の福祉の充実は経済基盤なしでは語れません。地元にブランド企業が少ないために若い労働人口が首都圏に流失してしまうのも深刻な問題です。札幌の背景にある北海道の豊かで安全・安心な食材や森林資源を活用し、知恵を絞って付加価値を高め、札幌ブランドとして世界のマーケットに発信するなど、北海道と札幌が連携して新産業を育成することが経済活性化の鍵です。 経済の足腰がしっかりすれば、そこに住む人は心も体も元気になります。先ず若い人たちがこのまちで働き、子どもを産み育てたいと思うきもちにしなくてはなりません。そして、行政とのパイプとなりながら、地域力をサポートし、子どもたちも高齢者も障害を持つ人も子育て中のお父さんお母さんも、すべての人が安心して暮らせるぬくもりと、潤いのある魅力的な東区、札幌のまちづくりを目指します。
札幌の経済・福祉・地域を東区発信のパワーで元気にしたい。
札幌市民、東区民の声に謙虚に耳を傾け本気の政治姿勢を貫く決意です。
今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申しあげ、私の決意表明といたします。
平成26年9月吉日
札幌市議会議員 鈴木 健雄